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第7話 『出さない手紙』を受け取ることと、書くことと…… (1)

 早いもので、このエッセイも、今回と次回で終わりなの。言っておくけれど、別にこれは「人気がないから打ち切り」なんてことではなくて、はじめから決まっていたことなのよ。って、こう書くと途端に言い訳がましくなるからイヤだわ。それに「始めてみたら人気もないし、8回くらいで終わることにしておいてよかった。渡りに船! イエーイ!」とリクルートさんに思われている可能性も、ないとは言えないしね。そのあたりは怖くて確かめることができないのだけれど。うふふ。

 実は、このエッセイをお引き受けしたときに、アタシ、「これだけは、何があっても入れよう」と決めていたテーマがふたつあったの。今回と次回でそのふたつを書いて、この『婚前読本~恋愛中のバイブル~』を終えられたらと思っているわ。

 アタシが14歳のときに母を亡くしていることはすでに書いたとおりだけれど、アタシの母の母、つまり祖母は健在で、祖母のリクエストに応じて、アタシは1年に最低でも1度は彼女の住む家に遊びに行って、あれこれと話し相手になっているのね。祖父は、7、8年前には「あら、おじいちゃん、もしかして……」と思う程度だった認知症が、ここ2年で急に進んでしまい、現在は施設に入居しているわ。アタシがまだ小さかったころから、母方の祖母は「ほがらか」を、祖父は「穏やか」を絵に描いたような人たちで、アタシはふたりのことが大好きだったし、いまでも本当に大好きなの(父方の祖父はすでに他界しているけれど、こちらの祖父母も大好きよ)。

 母親が亡くなってから、祖母は、事あるごとに生前の母の話をアタシにするようになった。まるで、そうすることが母の供養になる、と、思っているかのように。

「ほら、マコトくん覚えてる? お母さん(アタシの母ね)が死んだ後で、仏壇の引き出しから手紙が見つかったこと。あれはマコトくんのお父さんと、私に宛てた手紙だったんだよ。“こんなことになって、悲しいし、悔しい。子どもたちは、いい子たちばかりです。よろしくお願いします”って書いてあってねぇ。お母さん、入院するときには、自分のこと、もう分かってたんだねえ」「手紙を見たら、おばあちゃんも泣けてきてねぇ。でも、“ああ、自分の娘が書いても渡せなかった手紙を、死んだ後に受け取ったんだから、私は長生きしなきゃいかん”と思ったんだよ」

 こう話す祖母の眼には、いつもうっすら涙が浮かんでいるように見えて、アタシは必ず「よく覚えてるよ。だってその手紙、僕も読んだもの(アタシは家族親族には“僕”という一人称を使います。カミングアウトもしていないし)。その後、おばあちゃんが僕らにすごくよくしてくれたことも全部覚えてる。ありがとね。ほんとに、ありがとね」と言い、祖母の両手を自分の両手で包むようにしているの。祖母とアタシがこういうことを始めて、もう10年以上になるかしら。こうやって書き出してみると猛烈に恥ずかしいけれど、「祖母が喜んでいるのなら、アタシの気恥ずかしさは、この際、二の次」と割り切っているわ。祖母が話す内容も2,3種類のエピソードに限定されているので、必然的にアタシが返す言葉も限定されてくる。だから、まあ、ある意味「完成された」というか、様式美にのっとった、アタシなりの「愛情ベースのサービス」の一環でもあるわけね。

 今年の夏休みにも、アタシは祖母の家を訪れ、おしゃべりの相手をしていたのだけれど、祖母は、上に挙げたエピソードを話し終えた後、急に「マコトくんも立派に東京で仕事をしてるし、○○くん(アタシの弟)も××ちゃん(アタシの妹)も、それぞれに頑張っている。私は嬉しい。ほんとに嬉しいねぇ。だからおばあちゃんは“もう、いいかねぇ”って気になってるんだよ」と話し始めたの。驚いたアタシは即座に、「なに言ってるの! そりゃあ、もう頑張る必要はないけど、長生きはしてもらわないと困るからね」と、わりと強い調子で言い返したわ。祖母はしばらく黙った後、「そうだねぇ。……あのね、いつもマコトくんにはお母さんの話ばかりしてきたけど、今日はおばあちゃんの話を聞いてもらいたいんだよ」とつぶやいたの。そして――。

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たかやままこと/女性誌の連載やネットコラムなどで、幅広く活動するエッセイスト。
著書である『こんなオトコの子の落としかた、アナタ知らなかったでしょ』(飛鳥新社)は、
恋愛のツボから日々を楽しく過ごすコツまでが満載で、特に女性編集者たちに熱烈な支持者多数。

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